霜降-日壇公園の1日(2018年10月23日 晴れ 最高気温 19℃、最低気温 4℃)
霜降になりました。こよみのうえでは秋の最後の節気です。
日ごとに寒さが増し、今日は『北京秋天』の名にふさわしい青空となりましたが、昨日はPM2.5の襲来があり、これから冬にかけて空気が悪化(北京周辺で暖房用の石炭燃焼が盛んになるため)する前触れかと思うと憂うつになります。
【老夫婦が太極拳を楽しんでいます】
今回は、そんな秋の青空の1日、普通の公園で余暇を楽しむ北京の人たちの姿を紹介いたします。
【西天門の前でチベット族の衣装を着た人たちが踊っています。写真の私服のおじさんはその輪のなかに入れず、一歩離れて、見よう見まねで踊っています】
天壇はことに有名ですが、北京には全部で九つの壇があります。壇は皇帝が祭祈を行った場所のことをいうそうです。ちなみに申し上げますと、天壇、地壇、日壇、月壇、先農壇、祈谷壇、太歳壇、先蚕壇、社稷壇です。明清時代に造られた北京の九壇は、そのほとんどが今も残り公園として利用されています。
【朝から卓球を楽しむ人たち。全ての卓球台は使われています】
そのなかで、日壇は朝日壇とも呼ばれ、太陽を祭る壇として、北京の中心である紫禁城から太陽が昇る真東に4kmほど行ったところに造られ、1950年代に公園として開放されました。木々が生い茂る広さ20.62haのなかには、皇帝が朝日を祭った拝台(現在は立ち入り禁止)といわれるものがあり、その拝台を中心に、西天門、北天門、鐘楼など昔ながらの建物が配置され、さらに一周2kmほどのランニングコースや各種類のストレッチがある健康エリア、小山、池などが作られています。
【紅色の壁に囲まれた拝台の周りを合掌し、お経を唱えながら歩く青年】
10月中旬の土曜日、日壇公園を訪れました。なぜ日壇公園かというと、単に自宅から歩いて15分ばかりで近いということと、入場料が無料という理由だけです。
当日の日の出は6時20分。その時間に合わせて行くつもりでしたが、朝が大の苦手なわたしは、やっとのことで1時間遅れの7時20分に日壇公園に到着しました。着いてみると、人の多いことにびっくり。チベット族の衣装を着た男女が音楽をかけながら踊っていたり、ランニングコースを走ったり、歩いたりする人がひっきりなしにいます。笛を吹く人や太極拳をする人もいます。朝のひとときを人それぞれ楽しんでいるようです。写真の合掌し、お経を唱えながら歩く青年は、カメラを持ったわたしを見ても、まったく気にせず、一心不乱に円形の拝台の周りを何度も何度も回っています。つられて私も回ってみましたが、一周わずか3~4分でした。
【中央のおじいさんの掛け声にあわせて体操する人たち】
8時になりました。写真の青いシャツを着たおじいさんがスピーカーを枝にかけ、「1、2、3、1、2、3、……」と大音響を鳴らしはじめました。おじいさんがいる場所は、いろいろなストレッチが置いてある健康エリア。ストレッチを利用している人をはじめ周りの人たちのほとんどが、おじいさんの掛け声にあわせて体操をはじめたのです。多くの人たちが合わせてくれれば、おじいさんも張り合いがでるというもので、途中、マイクの調子が悪くなり、スピーカーから音が出なくなるというハプニングがありましたが、周りの人たちは、おそらく毎日のことで慣れているのでしょう、掛け声がなくても体を動かしています。最後に、みんなで、「オー!」と腹から声を出して、体操終了となりました。日本ではなかなか見られない自然発生的な集団体操は、中国人ならではのものかと思います。
【日壇公園の南門】
12時になりました。日壇公園にも昼のまったりとした時間が流れています。ほとんどの人たちは昼食を取っているのでしょう、人影は多くありません。ランニングコースを走る人もなく、卓球台を利用する人もいません。
【ひと組の家族連れ】
日壇公園の隣には、首都児童研究所というこども専門の病院があります。そのためか昼下がりではありますが、こども連れを多く見かけます。写真の若い夫婦、子を見つめる母親のまなざしは、日本でも中国でもどこの国でも温かいものですが、だんなのほうは見向きもせずに、ずっと携帯をいじっています。小さなキレツが少しずつ大きくなり、ひいては重大なことになることを、彼はまだ知らないのです。
【ひと組のカップル】
昼どきのひと気の少ないベンチにひと組のカップルが座っています。髪の長い女性が積極的で、眼鏡をかけた男性のほうが引き気味のようです。しかし、目を凝らしてよく見ると、眼鏡のかれ、男ではなく女ではないかと疑わしいのです。異性でも同性でもどちらでもよいことですが、中国も個人の恋愛は、オープンになってきているようです。
【あずまやで京劇をうたう人々】
16時30分、本日3回目の訪問です。日壇公園の南側、池と小山に囲まれたあずまやで、京劇を披露している人たちがいます。うたうのは若い男性と中年の女性、うしろには二胡を弾く二人の男性と拍子木のようなものを打つ人がいます。10人ほどの観客がのんびりと彼らの演奏を聞いています。
【中国将棋の人だかりを写す外国人】
中国の中年以上の人たちは、中国将棋やトランプが大好きで、この公園にとどまらず、椅子と台があれば市内のどこでも開帳しています。このようなゲームに口出ししないのが日本人の一般的なたしなみと思いますが、中国人は寄ってたかって、ああでもない、こうでもないと口出しします。聞いていると本当にうるさいほどですが、指している当人は見られていることが自慢なのか、それを嫌がるでもなく一緒になってしゃべっています。こんな光景は外国人にとって珍しいのでしょう、通りがかりの外国人がにやにや笑いながら人だかりを撮っているところを、写させてもらいました。
【社交ダンスを楽しむ人たち】
夕暮れ近くになり、ランニングコースを走る人や歩く人も増え、写真のように、社交ダンスをしたり、蹴鞠(けまり)のような足だけで羽がついた球を蹴って遊ぶグループがいたりと、残り少ない1日を惜しむように、公園は最後の活気を見せています。
【蹴鞠(けまり)のようなスポーツを楽しむ人たち】
文・写真=北京事務所 谷崎 秀樹
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★本コラムについてはこちらから→【新コラム・北京の二十四節気】-空竹-
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