【天南海北】『最近の宴会事情から見た白酒の未来』

昨年8月以降、公私を含めて3回ほど中国に行ってきましたが、毎回の旅で夜の宴会を欠かさず体験しました。日本人の中でも多くの中国経験者が「乾杯の嵐」を一度や二度の体験ではないと思いますが、最近の宴会事情はいくつかの変化を感じており、ここに共有したい。(あくまで自分の経験範囲ということを、最初にお断りします)

まず、乾杯(白酒を飲み干す)はそれほどしつこく強要されなくなりました。もちろん、宴会が始まったら多くの人がやってきて「乾杯、乾杯」と勧められますが、飲み干す必要がなく、舐める程度で交わして大丈夫です。そこで、最初から「私はお酒、特に白酒が強くない」と断った方が、さらにスムースに運べると思います。

ご承知のように、中国では宴会が親交を深めるということは昔も今も変わりません。一方、いまの中国は世界とほぼ同時刻の情報共有となっており、いろいろな意味での価値観共有がかなり進んでいると思います。白酒が世界的にも度数が高く、飲み過ぎると健康に害する意識が昔より格段に高くなりました。それが乾杯の遠慮につながったのではないかと思います。

もう1つ、いわゆる「飲み役」があまり見かけなくなりました。以前の会社時代、昼間の商談が終わり、さあ宴会だ、円卓に着いたところ、いままで見たことがない顔の方はニコニコしながら座っている場面がよくありました。宴会が始まると、盛んに乾杯を勧め大活躍していましたが、最後まで所属も名前も分からず、謎の人物でした。これも後になって分かりましたが、白酒飲みの代役で、いわゆる飲み役ですね。

前記の通り、そもそも「白酒飲み」が必須ではなくなり、そういう飲み役も失業でしょうか。時代の変化ですね。

また、最近の宴会では、小さ目のピッチャー(1合ほどの容器)がよく使われます。白酒をいったん、ボトルからこのピッチャーに移し、各人の前に白酒グラスとともに置かれます。自分で飲む量や注ぐタイミングなど、コントロールができることで内心ホッとしています。

ただ、時々このピッチャーで乾杯、乾杯を煽る強者が居り、まだまだ安心できないなと思っています。

時代の変化に伴い、飲食やライフスタイルもかなり変わっています。白酒の消費量が年々減少している模様で、白酒業界はその危機感がだんだん強くなっています。最近の報道によると、白酒の消費量減少は前記のライフスタイルだけでなく、他にも2大要因があると分析されています。1つは交通事情との関係です。2011年の関連法改正で、飲酒運転が刑法の適用となり、かなりの抑止力になりました。その結果、飲酒人口がそれほど減っていないものの、飲酒の頻度が大分下がることになりました。もう1つは、年代物が少なくなり、良質の白酒が減り、飲酒人口の減少につながったという分析です。

それより、若い世代の多くは純度の高いアルコールを好まないのが、最大の要因ではないかと思います。最近、街のカフェでは、「白酒ラテ」が出回っているというニュースを見て、若者を惹きつけるために、あの手この手で努力していると感心しますが、果たして挽回できるのでしょうか。

雷 海涛(2024年5月)