餃子と言えば、日本では知らない人がいないほどの「名物料理」です。30数年前の来日当初、日本の津々浦々では、中華料理の店に入れば、メニューには必ず餃子(ほとんど焼き餃子ですが)の一品があるのを見て、とても驚きました。実は、本場の中国はというと、餃子を主食として見かけるのは大体北方地区(東北や華北の地域、ほとんど水餃子)であり、南に行くほど、餃子の「存在感」が薄れていきます。あの有名な広東料理になると、ヤムチャの蒸し餃子程度で、餃子の姿がほとんど見かけなくなります。
自分は北京出身ということもあり、小さい頃から餃子が大好きです。餃子を食べるのが好きですが、作るのも好きです。日本の皆さんもお分かりですが、餃子の材料は小麦粉、挽肉(バラ肉の細切りは本来だそうですが)、白菜またはニラ、ネギ、生ショウガ、あと若干の調味料(塩、醤油など)で、これで完結します。もちろん、皮から作ることをお勧めします。やや面倒ですが、数回経験すれば、水の加減や柔らかさの具合を大体心得ます。あとは材料を切って混ぜれば出来上がり、最後は具を包むだけです。まあ、初心者は躓くことがありますが、2、3回の経験を積めば結構うまくなります。
茹で立ての餃子を黒酢付で食べれば、もうこれ以上ない至福のひと時です。こんなに安くて旨いものは、他にあるかと思うほどですね。
自宅で作った餃子(筆者)
さて、何を言いたいかというと、餃子ほど人々の交流や、人と人の距離を縮めるものはないということです。餃子の由来は2千年前と言われていますが、時代により様々な名称がつけられ、いまの「餃子」に定着したようです。「餃」は造字で、他の使い道はありません。食へんに交わる、つまり食べて交流、仲良しになる、なるほど、ピッタリの言葉ですね。
茹で立ての餃子(筆者)
ご承知だろうと思いますが、日本では餃子の街といえば、宇都宮市と浜松市が有名ですが、近年、両市の間でし烈な戦いが繰り広げられています。1つ面白い統計数字がありますが、総務省から毎月公表されている家計調査の結果で毎年、前記両市はトップ地位の争いがますます激しくなっていることから、さらなる盛り上がりに拍車をかけているようです。(下図)
宇都宮市は2010年に大幅増の6,134円で最高値となりましたが、それ以外の年では概ね3千円から5千円の間で増減しています。一方の浜松市は3,500~5,000円の間で比較的安定して推移しており、足元では2016年の4,818円をピークに2017年に大きく減少して、ここ3年間ではほぼ横ばいという結果となりました。2018年の宇都宮市の落ち込みが前年首位逆転の要因になっていたようです。(経済産業省の公表資料から抜粋)
さらに、総務省の家計調査から、以下のような結果がありました。
餃子支出金額(総世帯) 2020年
-1位 浜松市 3,556円
-2位 宇都宮市 3,308円
-3位 宮崎市 2,798円
-4位 京都市 2,348円
- 全国平均 1,758円
ちなみに、日本全国の世帯数は4,885万世帯(2020年)であることから、全国平均値で掛け算すれば、860億円ほどの市場規模になります。いやいや、たかが餃子、と言ってはいけません。本場中国を凌ぐほどの「餃子愛」ではありませんか。これほど両国民に浸透している食べ物は他にないのではないでしょうか。
ここに1つ提案したい。コロナが終息して、日中間の交流が再び活発化になった暁、ぜひとも「日中餃子大会」を催してはどうでしょうか。首脳も経済界も一般民間人も。旨い餃子を堪能しながら、肩の力を抜いて、さらなる相互理解を図りたいものです。
桜美林大学 雷海涛(2021年7月)