ペットのことは中国語では、「寵物」というふうに表します。その名の通り、寵愛する動物の意味で、やはり漢字で表すとピンと来ますね。日本語には「愛玩動物」という単語がありますが、あまり使われていないように思います。
我が家は2005年、北京駐在時にコーギーという犬種(メス)を飼いはじめ、「ルル」と名付けました。2013年東京帰任時に連れて帰り、今年(2021年)2月に亡くなるまで、通算16年の「ペット同居生活」でした。今回は観察してきた日中のペット事情について話したいと思います。
実はというと、ルルの両親は日本からの「輸入」です。2000年代、中国の都市部ではペットブームが起き、北京などの大都会では飼い犬があっという間に増えました。大連在住のある愛好者は日本から、当時の中国にまだ珍しいコーギーを手に入れて飼育したことはネットを通じて知りました。交渉の末、その子犬(ルル)を譲り受けることができました。そういう意味から、我が家はペットまで日中友好を体現していると言えます。(笑)
ルル(於東京)筆者撮影
さて、ご存知の方は居られると思いますが、中国の都市部ではペット飼育(特に飼い犬)が可能になったのは1990年代以降です。それまでは生活レベルや経済力が弱く、ペットを飼うほどの余裕がありませんでした。2000年代以降、規制緩和に伴い都市部のペットブームが起き、ペット(主に犬と猫)の数も急増してきました。中国寵物行業協会の統計によると、2020年に中国のペット数が1億頭超、中に55%が犬、45%が猫という状況です。対して、日本のペット数(一般社団法人ペットフード協会の集計、2020年)が1,800万頭余り、中に53%が猫、47%が犬と、猫の数がやや多い状況で、日本の住宅事情から小型犬や猫の飼育が多いことを伺えます。
もう1つ、この図表に示した日中の比較から、中国におけるペット飼育の人口比率がまだ小さく、今後さらに伸びる余地が大きいことは明らかです。現代社会では、仕事のプレッシャーから癒しを求めたり、子供のいない家族や単身世帯の寂しさを解消したりするなど、経済発展と生活レベル向上に伴うライフスタイルの変化からペット需要がますます増えると思います。しかし、その反面、ペット飼育における社会問題も浮かび上がってきています。
北京駐在時の話しですが、当時の実感では、小型犬から大型犬までかなり多様化している飼い犬を見かけました。しかし、マナーの面においては改善すべき点が少なくありません。例えば、リード線を付けるのが極少数で、放し飼いが多い。犬の散歩をしている時、他の大型犬が飛んでくる場面が何度も遭遇しました。そのほとんどがうちの犬と親しく遊びたいようですが、人間の方は驚いて逃げたい気持ちでした。動物にとって、放し飼いの方は自由に遊べて良いのかもしれませんが、人や他のペットを噛んだりすれば危険であると言うまでもありません。
中国も日本も、「少子高齢化」はこれからさらに進む傾向のようですが、ペット飼育は増えることあって減ることはないと思います。人間と動物の「調和」は引き続き社会の課題とも捉えられています。現代社会におけるペット飼育では日本の方が歴史長く、ノウハウがたくさん蓄積されたと思われます。日中間のペット飼育に関する交流を推進することは、少子高齢化という共通の課題を抱える両国にとって意義のあることではないでしょうか。
桜美林大学 雷海涛(2021年5月)