◆一般社団法人日中投資促進機構の海外アドバイザー 郭 文軍様より寄稿6◆
低空経済は、2024年において最も注目される新興産業の一つである。新たな生産力の代表として、各地で低空経済に関する取り組みが進展しており、資金支援やインフラ整備が具体化している。多くの地域が低空経済の将来性に期待を寄せているが、本稿ではこの産業の成長可能性と全国的な発展状況について分析する。
低空経済の展開は新業態を生み出す
物流分野では、低空物流が効率的で迅速な配送を可能にし、特に辺鄙でその真価を発揮する。低空観光は、空中観光やフライトキャンプといった新しい体験を提供する。緊急救助においては、ドローンなどの低空飛行機が迅速に救援物資を運搬し、災害状況の調査が可能である。農業分野では、農薬の散布や作物の成長モニタリングが行われる。また、低空飛行機の開発や製造産業も促進され、新型ドローンや小型飛行機などが含まれる。これに伴い、低空飛行のサービス管理や低空通信ナビゲーション関連の産業も発展するであろう。
各地域の低空経済の現状
各省はそれぞれの実情に応じ、低空経済という「ブルーオーシャン」で独自の発展ルートを模索している。航空産業の基盤が強固な地域は、低空産業クラスターの形成に力を入れている。消費者向けドローンや電動車の産業チェーンの強みを活かして急成長を狙う地域も存在する。航空産業基盤が整った地域は、製造分野への進出を図り、他の多くの省では飛行インフラの整備や航路計画、応用シーンの拡大に注力している。政策支援と産業の発展に伴い、各省の低空経済は今後さらに飛躍的な成長が期待される。
深圳の低空経済産業の取り組み
深圳は中国における低空経済産業のリーダーの一つであり、その発展は全国をリードしている。2022年末、深圳市は低空経済発展作業部会を設立し、統括的に産業発展を推進している。2023年末には、低空経済関連企業の育成や飛行応用シーンの拡大に向けた具体的な支援策が発表された。今年初めには、全国初の低空経済に関する立法「深圳経済特区低空経済産業促進条例」が制定され、市政府の主導で低空飛行インフラの整備が進められている。また、2024年3月には中国民用航空局が深圳の国家低空経済産業統合モデル区の設立を正式に承認し、低空空域の開放と制度改革が進められる予定である。
結論として、低空経済産業は短期間で利益を得ることが難しい分野であるが、地上のインフラ整備や「ソフトインフラ」の発展が鍵となる。業界全体の健全で長期的な発展を目指し、より多様で豊かな産業形態を育むためには、継続的な投資と忍耐が求められるであろう。低空経済の持続可能な成長を促進するためには、技術革新と規制緩和のバランスを取りながら、適切な支援策を講じていくことが重要である。