【天南海北】『中国旅行記』

先月(8月)に10日間の旅で、中国に行ってきました。4年ぶりでした。中国出身とは言え、長く日本に住んでおり、現場感覚がだんだん衰えています。増してやコロナ禍で世界が寸断され、国境を跨る移動が非常に難しくなったのが周知の通りです。いまは大分回復しましたが、中国への渡航ビザの手続きが煩雑など、多くの日本人は行くのを躊躇っています。その意味では、先月の中国の旅がそれなりに「貴重な体験」だと自慢しているところです。

個人の気持ちはさておき、この旅の体験談はいくつか共有してみたい。

まず、宿泊と移動を取り上げたい。4年ぶりのリベンジで、今回は北京、鄭州、武漢、広州、深センの5か所を回り、移動はすべて高速鉄道(新幹線)でした。行く前に、ホテルと高速鉄道のチケットをすべて、シートリップ(trip.com)で予約しました。ネット予約自体は極一般的になっていますが、驚いたのは高速鉄道の乗降です。つまり、空港と同じ仕組みを導入したことです。下図のように、ネット予約(個人情報が必要)を済めば、あとは身分証(注:外国人の場合はパスポートで、駅員(人手)の介在が必要)で乗降できます。紙の乗車券の引き換えが不要で、完全なDX化になりました。

図1 高速鉄道eチケットのスクリーンショット

前記の通り、5か所回りで計4回の高速鉄道移動ですが、すべて精確の発着でした。駅舎はどこも立派でだだ広い空間です。日本人の感覚からすれば必要以上の広さですが、前記のDX化と合わせて、乗降がスムーズにでき、以前のような混雑や混乱がなくなりました。

図2 広州駅の待ち合わせ室

次は、予想以上のモータリゼーションとEVシフトです。周知の通り、中国の自動車市場は2600万台(2022年)の規模と世界最大です。その中、新エネルギー自動車(EVとPHV)が約3割となり、これも世界最大です。専門家の見解では、あと2年もすれば5割の予測で、内燃機車交替の「臨界点」になります。

現地での肌感覚では、北京や広州は2、3割で、深センとなれば半分ぐらいではないでしょうか。また、タクシーやバスはもうほとんどEV化になっています。(注:新エネ車は緑色のナンバーを取り付けており判別し易い)

図3 深センの街角:緑色ナンバーの新エネ車

このような状況(前記「臨界点」)となれば、これまで内燃機関の強みを持っていない中国メーカーは一気に挽回する可能性が大きくなりました。訪問した複数の自動車メーカーですが、その車づくりや品質は世界の最先端と遜色ないレベルまで来ている感じです。それに、外観デザインや色、さらに新しい機能(スマホアプリとの連携)をふんだんに盛り込んで、中間層や若者を惹きつけるようなコンセプトを取り入れている印象です。

図4 中国のEV車:ピンク色の車体と紫色の内装

この頃、中国市場から撤退する日系自動車(注:内燃機自動車)の報道が出ており、完成車に限らず、部品やサプライチェーンの再編が今後一段と激しくなりそうな気配です。多くの企業は中国事業戦略の再考に迫られる状況であろう。

最後にソフトな話題を1つ共有したい。今回の旅はいたるところで美味しい料理を堪能してきました。決して高級レストランではなく、極一般的な店でも数々の絶品があります。以下の写真は河南省鄭州市内の名物料理「烩麺」です。ラム肉を5時間以上煮込んでスープにし、手打ちの麺(うどんに近い)に昆布の細切り、野菜、春雨、さらにパクチー、ラー油を盛って完成。チョー旨いの一言!

紙面の関係でとりあえずここまで、続きの話しは次回で。再見! 

以上

図5 鄭州の名物料理「烩麺」

(文中の写真はすべて筆者撮影)

 雷海涛(2023年9月)