【当機構海外アドバイザーより寄稿】『中国の「新三様」輸出、中国の対外貿易が「新」へと進む』

(補:新三様=新御三家:電気自動車、太陽電池、リチウム電池)

◆一般社団法人日中投資促進機構の海外アドバイザー 郭 文軍様より寄稿8◆

 世界経済の舞台において、中国の対外貿易は常に重要な役割を果たしてきた。衣料品、家具、家電といった中国輸出の「旧三様」は、規模の優位性とコストパフォーマンスによって、中国経済の発展に多大な貢献をしてきた。しかしながら現在、中国の対外貿易は大きな変革を遂げつつあり、電気自動車、リチウムイオン電池、太陽光発電製品といった「新三様」が台頭し、貿易構造の進化と産業の高度化を象徴している。 かつて、「旧三様」は中国の対外貿易の半分を支えていた。繊維産業、家具産業、家電産業といった伝統的な競争力を有する産業は、過去数十年にわたり、中国に多額の外貨準備を蓄積させ、雇用創出や関連産業の発展を牽引してきた。しかし、世界経済の状況変化、技術革新の加速、国際市場における競争激化に伴い、中国の対外貿易は「旧三様」に依存するだけでは多くの課題に直面することが避けられなくなった。一方で、労働力コストの上昇が伝統的な労働集約型産業の収益性を圧迫し、他方で、国際市場における製品に対する環境保護基準や技術要求の高度化により、伝統産業は新たな市場環境に適応するための絶え間ない進化を求められている。このような背景の下、中国の対外貿易は「新三様」へと進化を始め、新たな成長産業が台頭した。

出典:西安日報

 電気自動車(EV)は中国の対外貿易における新たな主力製品となっている。近年、中国の電気自動車メーカーは技術開発に多額の投資を行い、バッテリーの航続距離やスマート運転技術など多方面での革新を実現した。現在、中国の電気自動車は国内市場のみならず、海外市場でも高い評価を得ている。比亜迪(BYD)や蔚来(NIO)などのブランドは、国際市場において良好なブランドイメージを確立し、中国の先端製造業の世界進出を象徴する存在となった。
 リチウムイオン電池産業も急速な発展を遂げている。電気自動車の核心部品であり、多くの電子機器にとって重要なエネルギー源であるリチウムイオン電池の重要性は言うまでもない。中国はリチウムイオン電池の研究開発と生産において世界をリードしており、完全な産業チェーンを構築している。原材料の採掘から製造、包装、そして使用済み電池の回収とリサイクルに至るまで、高効率で持続可能なエコシステムが確立されている。このエコシステムは国内の電気自動車産業の安定的な発展を支えるとともに、世界市場への大規模な輸出を可能にしている。

出典:世界銀行

 太陽光発電製品は、世界的なエネルギー転換の潮流に乗り、ますます注目を集めている。中国の太陽光発電製品メーカーは技術革新を通じて、発電コストを大幅に削減し、発電効率を向上させた。現在、中国製の太陽光パネルやインバーターなどの製品は、世界各国の太陽光発電所に広く採用され、クリーンで再生可能なエネルギーのソリューションを提供している。特に日射量の多い地域では、中国の太陽光発電製品が従来型エネルギーからクリーンエネルギーへの転換を支援し、高い評価を得ている。
 中国の対外貿易は、「旧三様」から「新三様」への転換を通じて、単なる製品種類の変更にとどまらず、貿易構造の最適化と産業の高度化を象徴するものである。この転換の背景には、中国政府の技術革新に対する強い関心と積極的な支援があり、研究開発を奨励し、新興産業を支援する政策が次々と打ち出されている。企業自身も時代の要請に積極的に対応し、研究開発投資を増加させ、高度な人材を育成し、製品の核心的競争力を絶えず向上させている。国際市場において、中国はもはや伝統的な製造業製品の供給大国にとどまらず、新興の先端製造業およびグリーンエネルギー製品の重要な輸出国となっている。このことは、中国がグローバルな産業チェーンにおいて顕著にその地位を向上させ、国際経済分野における影響力を強化したことを意味している。 中国の対外貿易は、「旧三様」から「新三様」への画期的な転換を遂げ、新たな姿勢でより広範な未来に向かって歩みを進めており、世界経済の舞台で中国の新たな発展の軌跡を刻んでいる。