【当機構海外アドバイザーより寄稿】『中国移動通信技術』~世界をリードする台頭の道~

◆一般社団法人日中投資促進機構の海外アドバイザー 郭 文軍様より寄稿5◆

 これまでの移動通信技術の発展過程を振り返ると、中国は長い間、追随者の立場にあった。初期の移動通信標準と技術は主に欧米諸国が主導しており、技術開発や特許の分野で中国は相対的に弱かった。しかし、国家による科学技術革新への強力な支援と投入、さらに多くの企業や研究機関の共同努力により、中国の移動通信技術は急速に台頭し始めた。特に、中国の移動通信技術が世界を凌駕するに至ったのは、5G時代の到来によるものである。中国は5G分野において、注目に値する投資と革新的な成果を上げている。

出典:通信世界
一、5Gおよび天・地一体化通信: 
 5G標準の制定において、中国移動は国際電気通信連合(ITU)、第三世代パートナーシップ・プロジェクト(3GPP)などの国際組織において、主導する重要な標準プロジェクトの立案および提案数で、世界の通信事業者の中でトップに立っている。5G R17およびR18の主導するプロジェクト数でも、世界の通信事業者の中で首位を占めている。
 2024年4月22日、中国移動(チャイナ・モバイル)は自主開発した双星実験システムが軌道上の展開を完了し、軌道上でのテストを開始したと発表した。特に「中国移動01衛星」は、5Gの天・地一体化技術を検証することができる世界初の人造衛星であり、5G技術の宇宙での応用に向けた基礎を築いた。また、「星核」検証衛星は、世界初となる6Gアーキテクチャの宇宙での検証を実現し、新型の衛星搭載コアネットワークシステムを搭載して、商用級デバイスの高信頼設計や軽量化ネットワーク要素設計などの一連の重要な技術課題を克服した。
出典:智研瞻産業研究院
二、6Gに関連する予備研究と展開: 
 業界で早い段階で6Gのビジョンと要件、ネットワークアーキテクチャなどのホワイトペーパーを発表し、6Gの発展に向けた堅固なネットワーク基盤を築いた。
 6Gネットワークのエンド・ツー・エンドにおける重要技術研究を展開し、オンデマンドサービス、シンプル、柔軟性、生まれつきの知能、ネイティブセキュリティ、デジタルツインなどの分野において初期的な布陣を整えた。 
三、チップなどの基礎的ハードウェアのブレークスルー: 
 2023年に、中国移動は2年をかけて初の国産5Gチップを成功裏に開発し、海外の独占を打ち破ったと報じられている。
 2024年4月28日、中国移動は「大雲磐石DPUチップ」を発表し、帯域幅は400Gbpsに達し、国内のリーディングレベルに位置づけられた。これにより、国産DPUチップの最高伝送速度が倍増し、世界最高水準に達した。この後、データセンターなどの多くの分野で広く応用され、技術支援を提供することが期待されている。 
四、産業システムへの影響: 
 3G時代には、技術革新とネットワーク構築戦略を通じて、TD-SCDMAの旗を高く掲げ、国内市場において「三分天下の一角」を占めることに成功し、産業パートナーとの共同革新を推進した。  
これにより、チップ、端末、システム装置、計測器、大型アプリケーションソフトウェア、ネットワーク構築および運営など、あらゆる段階をカバーする完全な移動通信産業システムを中国で初めて形成した。
 4G段階では、TD-LTE標準を国際標準に押し上げ、中国の移動通信産業がチップや計測器などの弱い分野において集団的なブレークスルーを果たすことを促進した。5G時代には、産業チェーンの成熟を推進し、世界的にリーダーシップを発揮している。
 中国の移動通信技術は、すでに世界を凌駕し、輝かしい科学技術の象徴となっており、よりスマートで便利で効率的な未来へと世界を導いている。