【北京だより】8月16日号

8月12日(月)、中国民政部は「婚姻登録条例(改正草案意見募集稿)」を公布し、9月11日までパブコメの期間とされ、全国でホットな話題になっています。当該意見募集稿の内容によると、今後、結婚届も離婚届も身分証明のみで手続きができて戸籍謄本は不要となり、戸籍所在地で登録必須等の登録地域関連制限も廃止され、また離婚する場合は、「離婚冷静期」を設けることになります。簡単に言うと、「結婚をより容易にし、離婚をより難しくする」ことになっています。下図は中国の「結婚証」です。夫婦それぞれの名義で1冊ずつ所持しています。

近年来、中国の若者の人生観は変わりつつあり、「不婚不育保平安」(結婚しない、子供を産まないことで人生の順調を守る)というスローガンが流行っていて、結婚率も出産率も下がる一方であることが、大きな社会問題の一つになっています。中国国家統計局と民政部のデータによると、2013年の中国の結婚率は9.9‰だったが、2022年になると結婚率は僅か4.8‰で、9年間で結婚率は半減しました。結婚人数から見ると、2024年上半期の全国婚姻登録件数は343万組で、前年同期の392万8,000組より49万8,000組減少しました。専門家の推定によると、2024年の年間婚姻届の人数は約660万組で、これは1980年以来の最低値となるそうです。

子供を育てるのが嫌いならそれまでだが、中国の若者はどうして結婚さえしなくなるのだろうか。その背景には、複雑な各種の要素が絡みあって、一言で言えないと思っております。

まずは結婚適齢者の規模の縮小と男女性別の不均衡による結婚難が客観的な要素だと思われます。『中国統計年鑑2023』によると、中国の人口出生率は1987年にピーク(23.33‰)に達した後、全体的には下り傾向にあり、2022年にはすでに6.77‰に下がりました。また、『中国国勢調査年鑑2020』によると、30-34歳、25-29歳、20-24歳の人口の規模は順次縮小し、それぞれ12,414万52万人、9,184万73万人、7,494万17万人となっています。つまり結婚適齢者の規模は縮小し続けています。無視できないもう一つの影響指標は、男女比の不均衡問題で、結婚適齢者の中で男性が女性より少なく、これが都市部の女性結婚難を一層深刻にしたそうです。下図は北京の地下鉄を待っている若者たちの様子です。

次には、大学教育の普及に伴い、中国の大学以上の高等学歴の人数は年々高まっています。教育部が発表した「2023年全国教育事業発展統計公報」によると、2023年、中国の高等教育粗入学率は60.2%で、10年前の34.5%より25.7ポイント上昇しました。2013年から2023年までの10年間、博士在学人数は29.83万人から61.25万人まで増え、105.3%増加しました。修士在学人数は149.57万人から327.05万人まで増え、118.7%増加しました。教育年限の延長で初婚年齢の延期に影響し、これは晩婚の一つの大きな影響要素と言えるでしょう。

上記以外、不動産と結納金価格の高騰、子供を育てるための時間的なコストと教育支出の高騰等、高額な結婚コストは結婚難の重要な原因だと見られます。中国青年新聞社社会調査センターが青年層を対象に行った調査によると、若者の78.4%が住宅ストレスを感じており、大都市に住む若者のストレスはもっと大きいとのことです。また、テンセントニュースの谷雨データが2020年に実施した調査によると、全国では結納金の平均値は6.9万元で、その年の全国住民の1人当たり可処分所得(3.22万元)の2倍余りでした。また、子育てのコストも年々高まっていて、育児、保育、送迎、塾習いなど、若い保護者の経済力、時間、気力などを問われています。下図はある図書館の週末講義活動に参加している小学生たちの様子です。

それ以外、社会の発展に伴い、若者はこれまで以上に個人性、独立性、自主性を強調し、また、今のネット時代において、浮気や家庭暴力などのようなネガティブなニュースがしばしば報道され、若者はこれらの流れに衝撃を受けて、いつのまにか幸せな結婚への期待値が減っていき、「一人でもいい」と認めていく若者は増えつつあるようです。

今回の「婚姻登録条例(改正草案意見募集稿)」の発表は結婚率を高める効果はあるかどうか、しばらく様子見が必要ですが、「あまり期待できない」と言っている友達が多いようです。政府部門は更なる奨励政策等を打ち出すことが必要だろうと思われます。

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