【北京の二十四節気】立夏-牛街、回教徒の街-

5 05 2017

●立夏-牛街、回教徒の街-2017年5月5日(金)( 黄沙のち晴れ 最高気温 20℃、最低気温 14℃)

立夏(りっか)になりました。昨日から北京をはじめとする華北地域では、黄沙が荒れ狂い、外出を控えることを呼びかける黄沙警報が出ました。実際に、北京では、辺り一面が黄色となり、ひどい時には視界が100mほどになりました。ただ、この黄沙も今日午後からは姿を消し、きれいな青空となりました。

さて、今回は北京の牛街(niu jie)を、写真を中心に紹介します。牛街は北京の旧城内(第二環状線の内側)の西南方に位置し、イスラム教徒が多く居住する街として知られています。この街を訪れますと、ムスリム(イスラム教徒の別称)の帽子をかぶった男性や色とりどりのヒジャブ(女性のイスラム教徒が被るスカーフ)を頭に巻いた女性を多く見かけます。



新緑が吹き出しています。牛街に入ったところにある郵便局です。ここにもイスラム教のシンボルカラーである緑色の上に、金色や白色のアラビア語が書かれています。



牛街のスーパー。隣の入り口が羊肉シャブシャブの聚宝源(「大寒・2017年1月20日」で紹介)。いつもここには、聚宝源が販売する食品(牛羊肉やその加工食品)などを買う人でにぎわっています。



牛街スーパーの1階にある甘味販売処。イスラム教徒は飲酒が禁じられているため、お茶とお茶請けを大切にします。そのため、彼らのお茶請けは様々な種類があります。写真の真下が“切糕(qie gao)”というお餅と甘い餡を何層かに重ねたものです。右下が前回の「穀雨・2017年4月20日」で紹介しました甘味“ロバがのた打ち回る(馿打滾儿lű da ger)”。ここのロバは大きいです。



牛街スーパーの2階は食堂になっています。まず、この食堂専用のプリペイドカードを買い(金額は自由)、左側に見えるとおり、牛街独特のお店が数店舗出ていますので、好きな店で好きな食べ物を購入します。余ったプリペイドカードはいつでも返金してくれます。写真では分かりづらいかもしれませんが、一番左側の牛肉面の店は閉まっていました。他にも1、2店閉まっています。北京では景気が回復しつつあると言われていますが、まだ本調子とまではいかないようです。



食堂の従業員。きれいなヒジャブを巻いています。一見して、イスラム教徒と分かります。



牛街と直角に交わる道を、輸入胡同と言います。この周辺にはアパートが立ち並び、ムスリムが多く住み、彼らのための食料品店が沢山あります。



輸入胡同には数件の肉屋があり、写真はそのうちの一軒です。どの肉屋も、牛肉や羊肉をそのまま吊るして売っています。日本ではあまり見られない光景ですが、この街ではこれが普通なのです。北京でも一般のスーパーでは肉をパックにして売っています。しかし、庶民は、パックの肉は冷凍もので新鮮でなく、一方、この吊るし売りは新鮮で、更に安いと言っています。



ここも輸入胡同の一角です。ちなみに、輸入胡同は、昔、“熟肉胡同”と言っていました。熟肉(shou rou)では聞こえが悪いということで、似ている発音の輸入(shu ru)に変えたそうです。しかし、肉を吊るして売る店が多いこの街にとって、“熟肉”のほうが美味しそうで、ちょっと色香もあり、この街に合っていると思いますが、如何でしょうか?



牛街の南端にあるイスラム教の大学(中国イスラム教経学院)。イスラム教らいし建物です。

中国では、イスラム教が始まった時(610年)からわずか40年後の651年(唐の第三代皇帝高宗の永徽2年)にイスラム教徒の使節が渡来しています。そして、14世紀はじめ、騎馬に乗ったモンゴル人がユーラシア大陸のほぼ全域(西欧、インド、東南アジアを除く)を支配しました。これにより、大陸上での大量の人々の移動が実現しました。モンゴル人はイスラム教徒ではありませんが、移動・流通を奨励したために、一説では、モンゴル時代に100万人以上のムスリムが中華本土に来た(出所:杉山正明氏著【中国の歴史08 疾駆する草原の征服者】)と言われています。

現在、中国では、人口のほとんどを占める漢族のほかに、55の少数民族がいます。そのうち、イスラム教を信仰するのは、回族(約981万人)、ウイグル族(約832万人)、カザフ族(約12万人)など、10の民族で、合計2,013万人です。そのうち、北京のイスラム教徒のほとんどは回族で約24万人、北京全体の人口の1.76%を占めます(以上のデータは2013年のもの)。

モンゴル時代(元朝)の大量移住からでも600年以上に亘り、中国のイスラム教徒は圧倒多数の漢族に飲み込まれることなく、自らの文化を保ってきました。当然、それはイスラム教という信仰があることが最大の要因です。我々日本人にとって、イスラム教は馴染みがなく、原理主義などという極端なイスラム教徒によるテロだけが強調されるため、敬遠しがちですが、北京では漢族と回族が互いの文化を尊重し、ともに暮らしています。

次回は、イスラム教徒の生活を知るうえで欠かせないモスク“牛街礼拝寺”を紹介したいと思います。

文・写真=北京事務所 谷崎 秀樹


★本コラムについてはこちらから→【新コラム・北京の二十四節気】-空竹-
★過去掲載分:
穀雨-護国寺の北京伝統の甘味-2017/4/20
清明-地安門の凧屋-2017/4/4
春分-新華門の白玉蘭-2017/3/20
啓蟄-通州に北京行政副中心-2017/3/5
雨水-新街口の中国楽器屋-2017/2/18
立春-地壇公園廟会-2017/2/4
大寒-聚宝源(羊肉シャブシャブ)-2017/1/20
小寒-中国最初の映画館-2017/1/5
2016年掲載分