【北京の二十四節気】霜降-人狼ゲーム-

10 23 2017

霜降-人狼ゲーム (2017年1023日 晴れ 最高気温 16、最低気温 5


突然ですが、『人狼ゲーム』をご存知ですか?

かくいう私も、北京の若い友人から教えられるまで、知りませんでした。

【狼の面】

 

とある秋の夜、友人に連れられて、その店を訪れました。そこは、バーが並び夜遅くまで人通りが絶えない什刹海(shi cha hai)から細い路地に入り、少し歩いたところにあるつたに覆われた一軒の民家でした。

【人狼ゲーム専門店】

 

民家を入ると直ぐに古びた木の階段が眼に入り、階段の左にはカウンターと10畳ほどの部屋があります。19時を過ぎていたでしょうか、1213名の若者が集まっています。彼らは、前に置かれた番号で互いに呼び合い、「何番が怪しい」とか「何番が狼である」とか、その理由を交えて、一人ずつ話をしています。

 

【店内】

 

『人狼ゲーム』は、参加者が村人、狼、神の3種類の役回りに分かれます。昼のターンでは、村人は、互いの発言を聞きながら、誰が狼かを推理し、一番怪しい者を一人ずつ処刑し、村の平和を目指します。夜になると、狼が本性を表し、村人を一人ずつ食べながら村の全滅を目指します。神には、預言者や巫女などがいて、ゲームをより複雑に面白くさせているようですが、私自身、よく分かっていないために、うまく説明ができません。ただ、ざっくりといえば、うそを言って、自分の正体をばれないようにするゲームです。

 

【真剣に話をする青年】

 

「処刑」とか「食べる」とか、聞くだけで物騒ですが、それはゲーム上のことで、本当にそうなることは決してありません。不幸にもそうなった参加者は、その回の出番が無くなるだけで、暇つぶしに、ゲームを見たり、ご飯を食べたり、タバコを吸いに外に出たりして、気楽なものです。昼と夜の違いは、参加者が一斉に目をつぶれば夜になり、目を開ければ、昼になります。今回は、特別に、日本人が来るというので、狼の仮面を用意いただきましたが、これは試合用の特別なもので、普通は使わないそうです。

 

【皆、仮面をかぶり、夜になりました】

 

このように、このゲームは、何の道具も要らず、一定の人数(最低9名いないと面白くないそうですが)さえ集まれば、始めることができる手軽なもので、今、中国の若者の間でブームになっています。

火付け役は、中国最大の富豪である王健林・万達集団董事長の一人息子王思聡氏です。今年29歳になる彼は、このゲームをはじめいろいろな卓上ゲームが大好きで、金にあかせてプレーヤー育成のために『熊猫殺(パンダを殺す)』というネット配信の番組が作ったのですが、これが大当たりしました。まさしく、お金がお金を生むというといううらやましい話です。

 

【中国東北地方から出稼ぎにきている店長】

 

中国の発展は早く、その変化は激しいものがあります。そのなかで、沿海地域と内陸部、北京などの大都市と中小都市、或いは都市と農村、これらの地域間格差、そして個人の収入などの経済格差が問題となっていますが、世代間格差も顕著になっています。

中国では、生まれた年代別に、70年代(90年代の父母であり、貧乏を経験した年代)、80年代(最初の一人っ子政策で生まれた世代)、90年代(今の若者、豊かさを享受する世代)と、明確に分かれています。

70年代以前の青年達は、誰もが貧乏のなかで、勉強して大学に行き、親の面倒をみるという明確な目標を持っていました。しかし、今の若者は、大学に行っても、就職に付けるか分からず、仮に就職できたとしても、自分の給料だけでは高騰を続けるマンションを買うこともできず、親のサポートがないと生活ができないというように目標を失い、貯蓄をせずに、お金が入れば使ってしまう等々、一種の無力感が漂っていると言われています。

 

 

【ヘッドホンを首にかけて話をする青年】

 

そのようななかで、参加者全員が最低1回は発言することができ、その発言を全員が真剣に聞き、相手の話から糸口を見つけるというこのゲームは、単純なテレビゲームにはない、推理や弁論を楽しむ知的な遊びとして、若者の間で流行しています。

特に、彼ら一人ひとりが発言し、それを皆が聞くという、いわば他人に認められるという満足感といったものを求めて、若者たちがこの店に集まってくるのかもしれません。裏を返せば、彼らの周りには、真剣に話を聞いてくれる人が少ない証拠でもあります。同時に、昔は人を押しのけてでも発言する中国人が多かったものが、一人っ子で甘やかされて、お坊ちゃま、お嬢ちゃまとして育った90年代の若者は、順番が来ないと発言できなくなっているのかもしれません。

 

【真剣に話をする女子大生(中央)】

 

見破れないように、うそを言い合っている彼らの姿をみると、60年代のおじさんである私は、本当に楽しいのですか? 心の中で別の助けを求めているのではないですか?と言ってしまいたくなります。

しかし、そんなことは口にもできず、彼らの表面上ゲームを楽しむ姿を1時間ばかり見ただけで、肩を落として帰途につきました。

文・写真=北京事務所 谷崎 秀樹

 

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★本コラムについてはこちらから→【新コラム・北京の二十四節気】-空竹-
★過去掲載分:
寒露-東岳廟-2017/10/8
秋分-あるシェアハウス-2017/9/23
白露-北京の剣道-2017/9/7
処暑-八大胡同-2017/8/23 
立秋-恭王府-2017/8/7







 

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