【北京の二十四節気】寒露-東岳廟-

10 08 2017

寒露-東岳廟 2017108日 (曇り/中度の大気汚染 最高気温 18、最低気温 13

中国では、今日までの一週間、国慶節で休みとなり、真ん中の10月4日が中秋節でしたので、二重のお祝いムードとなりました。

中秋節の日、東岳廟の門前に『兔爺(tu ye)と呼ばれる泥人形が山のように並べられます。これは、月の兔が百草を採って良薬を作り、人々を病から救ったという故事にちなんで、毎年旧暦8月15日に行われる北京の伝統行事です。

というわけで、今回は東岳廟を紹介したいと思いますが、実は大変後悔しています。なぜかと言いますと、東岳廟が奉じる『道教』が難しいのです。

 

【東岳廟の門前に置かれた兔爺の山

 

いまから約2,500年前、百歳の長寿を全うした老子(紀元前571年~紀元前471年)が著した『道徳経』が道教の経典となっています。道徳経の冒頭には、

「道は道であるが、非常の道なり。名は名であるが、非常の名なり」

と、道教のいう『道』とは何かということについて、簡潔に記されています。しかし、浅学の筆者では、わけが分かりませんので、博学の方の助けを借ります。

「天地万物が生ずる以前、そこには宇宙の母たる何ものかが存在していた。しかし、それは混沌としていて人間にはとらえられず、老子自身も、その名を知らないという。『道』とは、その仮称なのである。

そして、老子は、この道の姿を理想として、処世のあり方を説く。さかしらにふるまわないこと、多くのものを持たぬこと、一歩身を退くこと、俗世の中におけるさまざまな智慧を説くのである。」(湯浅邦弘氏著 『諸子百家』中公新書179頁)

お分かりいただけたでしょうか?

「難しいのでやめる!」

そんなこと言わないで、どうか続けてお読みください。

独特の衣服をまとった道士

 

間違いを恐れずに申し上げれば、道教とは「山水画の世界」なのです。奇怪な山が連なり、穏やかな川が流れ、小さなあずまやに白髪をたらした翁(おきな)が童(わらべ)と暮らす一幅の絵。これこそが、中国人の理想とする世界であり、その実現への道が道教ではないかと思います。

多くのものを持たぬ? 一歩身を退く? 信じられない。今の中国人は、自己主張が激しく、金銭欲も強いんじゃないかね!

また難問にぶつかりました。中国人全員がそうとは限りませんが、一般的な見方としては、ご質問の通りです。昔から、農業ができる豊かな中国平原地帯に住む人々は、周辺の騎馬が得意な少数民族などと交易を行い、時には襲撃を受けることによって、農業ばかりでなく、商業も発達し、同時に、自己主張も、金銭欲も強くなければ生きていけませんでした。そこには、食うか食われるかという殺伐とした欲望だらけの世界が広がっていたのです。そんなどろどろとした俗世であればこそ、老子が生まれたのではないでしょうか。

 

【本殿前のろうそく売り場で店番をしている白猫と話しかける少女】

 

遅ればせながら、東岳廟の紹介をします。東岳廟は道教の一派である正一道の一大堂宇です。北京朝陽門から800mほど東に行ったところにあり、元の延祐6年(1319年)の創建です。敷地面積は6万㎡、主殿は岱岳殿(だいがくでん)といい、全ての神を束ねる東岳大帝が祀られています。

 

【神の部屋を見つめる】

 

主殿と前門である瞻岱門(せんだいもん)は、神路と言われる直線の道でつながり、また、回廊も建てられています。両サイドの回廊には『七十六司』という、いわば、管轄毎に分かれた神の部屋があります。それぞれの神の部屋は、幅2m、奥行き5mほどで、人の形ばかりでなく、妖怪や怪物などの姿をした人形も置かれています。怪異なものを使って、人を驚かし、信じさせるところが正一道の大きな特徴です。七十六全てを紹介することはできませんので、際立ったものを3つだけご覧いただきます。

 

【精霊・妖怪をつかさどる神の部屋】

 

日本では精霊・妖怪といえば、人に祟りする悪い者というイメージですが、この者たちは、凄いのです。人々が驕り、悪事を多く行うと、鬼神が怒り、精霊・妖怪を遣わし、自然災害を発生させ、果ては国を亡ぼすなど、警鐘を与えるというのです。国家の存亡を握る凄い妖怪達の部屋にしては、何の装飾もなく、埃だらけですが、可愛い顔をした親子猿もいますので、ご愛嬌と思ってください。

 

【貴賤をつかさどる神の部屋】

道教では、人の貴賤は、命により定まったものではなく、人の善行・悪業により変化すると教えています。ここの神は、世の人々の行動を監察し、それにより貴賤を決めます。富があっても不仁の者は貧に落ち、また、善事を多くなす者は貧から富に変化するそうです。皆さんも、ここにお参りされたら、いかがでしょうか。

 

【胎生をつかさどる神の部屋】

 

ここでいう胎生とは、母体から生まれた哺乳動物を指します。善を修めない者は、来生で畜生に落ちることを警告しています。怖いですね。

 

【寿槐(じゅかい)と呼ばれる老木にて】

 

老木に一心不乱に祈りを捧げている人がいました。

老子が言った『上善若水(上善、水のごとし)』そのままに、水が清く、汚く、弱く、時には恐ろしくもなるように、自然とともに生きるのが道教の教えなのかもしれません。一方、自然だけでは生きることができない厳しい現実の世界のなかで、中国人の心の奥底にある理想や人には言えない自己の過ちが道教を信じる原動力になっているのではないかと思います。しかし、我々日本人には、中国人の心の奥底が分からないのと同様に、道教を簡単には理解できないと思います。

さかしらにいうことはやめます。分からないものは分からないとして、この辺で筆を置かせていただきます。

 

【上手に降りられるかな】

文・写真=北京事務所 谷崎 秀樹

 

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★本コラムについてはこちらから→【新コラム・北京の二十四節気】-空竹-
★過去掲載分:
秋分-あるシェアハウス-2017/9/23
白露-北京の剣道-2017/9/7
処暑-八大胡同-2017/8/23 
立秋-恭王府-2017/8/7





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