【北京の二十四節気】穀雨-護国寺の北京伝統の甘味-

4 20 2017

●穀雨-護国寺の北京伝統の甘味(2017年4月20日 晴れのち曇り 最高気温 22℃、最低気温 10℃)

春の最後の節気である穀雨(こくう)になりました。穀雨とは穀物の成長を助ける雨のことで、田畑を準備し、苗を植え、苗を育てるこの時期に降る恵みの雨のことを指します。しかし、北京では雨は滅多に降らず、乾燥した日々が続いています。
さて、今回は北京伝統の甘味を紹介します。中国語では「甘い品」と呼ばれるものですが、デザートやスイーツと訳すのはちょっと違和感があり、菓子では物足りなく、迷った挙句、「甘味」ということにしました。


【護国寺街の入り口】

北京の北海公園の北に地安門西街という東西に走る大きな道がありますが、それと更に北側に並行して、「護国寺街」という観光客も来るようになった飲食店が軒を連ねるストリートがあります。ここに今回の主役である「護国寺清真京味小吃」本店があります。この店はチェーン店化し、北京に系列の店が数ヵ所あります。
「護国寺清真京味小吃」という長ったらしい店の名前を簡単に紹介しますと、護国寺は言わずと知れた仏教のお寺ですが、このストリートにはお寺は無くなり、地名だけが残っています。清真は“汚れがない”という意味で、回教徒のための料理を指します。京味は字のとおり北京の味という意味で、北京が元、明、清王朝の宮廷所在地であったことから、宮廷料理(主に満州族)と庶民である漢民族の料理を指します。“小吃(xiao chi)”は、日本に無いものなので説明が難しいのですが、ざっくり言いますと、ちゃんとした食事(主食やおかず)ではない、その他の食べ物全般のことを指します。例えば、酒のつまみ、茶菓子、おやつなどです。ちなみに、中国語の“吃(chi)”は“食べる”という意味で、昔は“小吃”のことを、“小食”とも言いました。つまり、「護国寺清真京味小吃」は「護国寺にある回教徒の料理と北京風(宮廷と庶民)の料理のうち、ちゃんとした食事以外の食べ物を売る店」となります。
なんだかややこしくて、すみません。しかし、北京の人たちはこの“小吃”が大好きです。北京の人に「“小吃”を言って下さい」と聞きますと、
「豆汁(dou zhi)、焦圏(jiao quan)、炒肝(chao gan)……」(これらは今後機会を見て紹介します)
と、誰でも喜び勇んで直ぐに10や20、指を折りながらしゃべり出します。日本人が魚の種類を沢山言えるように、北京の人たちはこれを沢山言うことが出来ます。それだけ“小吃”が北京の人々に親しまれているのです。
この北京の伝統的な“小吃”は、盛時は200種類以上、今でも100種類以上あると言われています。「護国寺清真京味小吃」の販売品目は、“小吃”と同じとまでは行きませんが、それでも80種類ほどあります。そのうち、北京の伝統的な甘味も沢山ありますが、全てを紹介することはできませんので、代表的なものに絞って紹介します。これらの甘味は正式な食事のときのデザートとして、或いは小腹が空いたときのおやつとして、食べられます。


【店内。昼時は大変混雑し、ほぼ無秩序状況のため、注文するのも一苦労です】

●ロバがのた打ち回る(馿打滾儿lű da ger)
この甘味は、直訳すると“ロバがのた打ち回る”という名前です。宮廷料理の流れを汲み、その面白い名前から、北京を代表する甘味となっています。中華料理のフルコースなどでは、必ずと言っていいほど、最後にこの甘味がデザートとして出てきます。この甘味は、お餅にあんこを塗って巻いたものに、黄な粉が振りかけられています。名前の由来はいろいろありますが、北京らしく、黄土のなかでロバがのた打ち回る姿や色から連想されたものらしいです。黄な粉には砂糖は入ってなく、お餅のあんこの甘さと黄な粉がほどよくマッチしています。


【甘味の詰め合わせ26元(約420円)。左から、“ロバがのた打ち回る”、第二列の上下二つは“ゴマとナッツがかかった紫の餅(中国名=紫米球)”、真ん中に一つあるのが“Ai Wo Wo(艾窩窩)”、第三列が“ヤシの実がかかった白い餅(中国名=椰茸巻)”、第四列が“中国風ういろう5種(味がそれぞれ違います。中国名=豌豆黄)”。このパックの詰め合わせは全て宮廷料理(満州料理)の流れを汲むものです】

●Ai Wo Wo(艾窩窩)
翻訳のしようがありませんので、このままの名前でお伝えします。艾 (ai)は“よもぎ”という意味ですが、この甘味とは関係ありません。あくまでも当て字で、ある皇帝(清朝と思いますが確かではありません)が窩窩(wo wo)を大変に好んだ、窩窩を愛した(「愛」と「艾」は同じ発音)ということでこの字が使われるようになりました。窩窩は「くぼみや住家」という意味ですが、これもあまり関係ないと思います。なぜ、こんなよく判らない名前になったのかといいますと、モンゴル人や満州人が中国を統治(元、清)したために、モンゴル語や満州語に由来するものがところどころに残っているからです。この艾窩窩も昔はモンゴル語の“bu luo jia(中国語の標記)”とも呼ばれていました。この艾窩窩は、小さな真っ白な球体で、白い餅の中にナッツと蜂蜜が入っています。とても優しい味がします。


【甘味の詰め合わせ第二弾13元(約210円)。左上から、“Jiang Si Pai Cha(中国名=姜絲排叉。少し粘りのあるステックに生姜蜜をかけたもの。満州族や回族のお茶請けのひとつ”、 左下が“口を開けば笑っちゃう(中国語=開口笑。あまり甘くなくサクッとしています)”、第二列が“Sa Qi Ma(やわらかいおかき)”、第三列が“甘い耳たぶ(その形からこの名前に。回族料理の一つで、砂糖を小麦粉の中に大量に入れたドーナッツをぎゅっと固めたようなもので、とても甘い)”】

●Sa Qi Ma(沙琪瑪 or 薩其馬(発音はほとんど同じ))  
これも満州語のため、中国語の当て字は標記した二つ以外にも数種あります。満州人が山海関から中華平原に入ったのち、流行したものと言われています。写真を見ていただくと分かるとおり、形や味は柔らかいおかきです。


【上が“Dun Bo Bo(墩餑餑)”、下の二つが“あんこ餅を揚げたもの(これは天津が有名ですが、北京でもよく売っています)】

●Dun Bo Bo(墩餑餑)
小麦粉を練ってぎゅっと詰め込んだ、100%小麦というものです。日本で似たものを思いつきません。これは長期保存ができ、携帯も簡便なため、モンゴル人や満州人の携帯食糧でもありました。彼らは、これを馬の背に結わえ、狩をし、戦闘を行ったのです。墩(dun)は橋脚のように円形に築き上げたものの形状を指し、餑餑(bo bo)は満州語かモンゴル語のようです。今では、食べやすいように、砂糖を入れ込み、ほのかに甘くしていますが、それでも、とても重く、これを一つ食べるのは至難の業です。



 今、北京では当然のことですが中国語の世界となり、満州語は死語に近くなっています。そのため、モンゴル人や満州人が大活躍をした時代は歴史で学ぶだけかと思っていましたが、彼らの生活のなかで食べていたものが、こんなところに息づいていたかと思うと、古い友人にひょっこり会ったかのように、とても嬉しくなりました。

「護国寺清真京味小吃」本店:北京市西城区護国寺街68号

文・写真=北京事務所 谷崎 秀樹

★本コラムについてはこちらから→
【新コラム・北京の二十四節気】-空竹-
★過去掲載分:
清明-地安門の凧屋-2017/4/4
春分-新華門の白玉蘭-2017/3/20
啓蟄-通州に北京行政副中心-2017/3/5
雨水-新街口の中国楽器屋-2017/2/18
立春-地壇公園廟会-2017/2/4
大寒-聚宝源(羊肉シャブシャブ)-2017/1/20
小寒-中国最初の映画館-2017/1/5
2016年掲載分

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